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投稿者 高野弘幸
作成日 2018-05-01 (火) 20:14
ㆍ照会: 187  
詩集「蒲柳の質に産まれ来て」 第二部

ミューズに捧げる歌

ミューズよ

寒風の吹き渡る海を越えて

私はやって来た

浮き上がれ ミューズよ

涙の花が宝石にこぼれ

オルフェウスよ

暗黒に騒ぐなかれ

蜜多き果実の琥珀色の葡萄酒を

ミューズに捧げよ

小鳥は歌いやみ

眠る黄昏の三色菫

竪琴の音が流れ

ミューズの歌が始まる

 

ある心象風景

母はまだ幼い私の手を引き

一階の噴水のところにいた

あたりは まばゆい金色に光っていた

夢かうつつかわからない

その風景だけが心に残っていた

 

河内の風穴

夏休み 子どもたちを連れて

田園を自動車で走り

滋賀県河内の風穴(ふうけつ)に行った

梯子段を降り 石ころの坂をくだる

夏も涼しい

あのころ川で取った小さな魚

今は歩くことさえ困難になった

喪中葉書に思う昔の人々

夜空に祈る

 

治らない痛みを抱えて

心の痛み 身体の痛み

出会いの線上細工は 今までもあったし

これからもあるかも知れない

出会いは星空の彼方からやってくる

母なるものは 出会う者を育て また疎外する

徒労 渇き

荷物をすべて捨てて歩くとき

散らばってゆく風が明るい歌を告げる

 

 

墜落と栄光

高い崖から落ちてゆく

一生がパノラマのように

 

孤独な散歩者は帰らない

愚昧な過去が剥がれ落ち

もう失う時空はない

人は塵から塵へと還る

 

あらかじめ失われた恋人は

バルコニーで花殻を摘んでいる

 

頭上高くトンネルの彼方

まばゆい光が見える

ハングライダーに乗って

空へと舞い上がる

ここちよい風が吹き

 

自動車に乗って行く人々は

散歩者が去ったことをまだ知らない

 

生と死のはざまで

帰らざる日々を詩人が悔いている

不明の未来に焦ってもどうにもならない

あるとあらゆる人に老いと死はやって来る

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

ゴドーを待ちながら 戯れのうちに 今日も暮れ行く

輝く朝に散らばったものが帰って来る

呪いも雛のようにねぐらに帰る

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

春の日 蜜蜂は花と交わり

夕暮れの紫の海の潮騒

濁り酒飲むべくあるらし

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

出会う人々に 親しい言葉を投げかける

アインシュタインが時空の歪みを告げている

スペードの女王がそっぽを向いている

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

花咲く乙女のかげに

妖精が棘ある毒を作っている

専制政治が忖度をしている

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

愛の終わりに焼かれた手紙が燃えている

昼夜を分かたず 地震は突然やって来る

静かな森へ はるかな国へ逃れ行け

 

昼と夜のはざまで

生と死のはざまで

 

マクベス

だれの人生にも一度はある

こんなはずではなかったと

時は静かに流れ行き

バーナムの森がやって来る

 

後ろから火が追いかけてくる

風にも似た運命が追いかけてくる

忖度はできない

蜘蛛の巣城に立て籠り

 

地に落ちた正義が(とき)の声を挙げ

トランペットが鳴り響く

明日が来 明日が去って行く

世の終わりにたどり着くまで

 

いのちある限り

空に青空のある限り

野に花が咲く限り

生きてみようか

最終楽章に至り着くまで

 

夜空に寂寥の星々がある限り

川に鴨の浮かぶ限り

生きてみようか

最終楽章に至り着くまで

 

シガレットのある限り

人の親切が心に沁みる限り

生きてみようか

最終楽章に至り着くまで

 

遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん

遊ぶ子どもの声きけば

生きてみようか

最終楽章に至り着くまで

 

我が心は石にあらず

やり場ない怒りの陰には

無数の心の傷があった

噴火しそうな心を抱え

今日も夜の(とばり)が降りる

 

我が心は石にあらざれば

転ずべからず

我が友よ 君に寄せる手紙には

血がにじんでいる

 

隠されたありとあらゆる悲劇の数々を

銀の雨が覆って行くこの地上で

明日も聞かれることのない声なき叫びを

誰かがあげていることだろう

 

列車が降りて来るとき

銀河の彼方から ゆっくりと

列車が降りて来る

ぎっしり詰まった過去を投げ捨て

黒い列車のステップに片足をかける

 

臨死体験の始まりだろうか

前の席にジョバンニとカムバネルラが座している

黄色い十字架が車窓に見えて

「主よ、みもとに近づかん」と歌っている

 

夜空を列車は ひた走りに走る

天気輪の柱が見えたとき

「お前はまだここに来るのは早い」という声が聞こえ

列車は止まった

 

そして誰もいなくなった

空中ブランコがあり

火の輪くぐりがあり

三輪車に乗った熊があり

綱渡りがあり

不思議なマジックがあった

 

ピエロが一人タバコを吹かし

そして誰もいなくなった

 

思い出の渚があり

ブルーシャトーがあり

花の首飾りがあり

亜麻色の髪の乙女があり

モナリザの微笑があり

エメラルドの伝説があった

 

恋して燃えた火を雨が消してしまった

そして誰もいなくなった

 

境界例人格障害があり

敏感関係妄想があり

摂食障害があり

パニック障害があり

Xジェンダーがあった

 

ミネルヴァのフクロウが黄昏に飛び立ち

そして誰もいなくなった

たとえば私は貝の殻

たとえば私は貝の殻

潮のざわめきを思い出す

たとえば私は夏の鳥

虹立つ空に舞い上がる

たとえば私は秋の風

輝く畑を吹き渡る

たとえば私は冬の月

心の友を待っている

奈落の底から

一瞬の選択の間違いで

また井戸の底に落ちてしまった

悲哀の星が一粒流れ去った

南の海では愛らしい人魚が浮かんでいる

アラモの砦が騎兵隊を待っている

地上で盲導鈴の音がする

(まぶ)しい追憶が現われては消えて行く

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