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投稿者 高野弘幸
作成日 2019-01-22 (火) 20:46
ㆍ照会: 1483  
ベツレヘムの星

春の気配は陽射しのなかに 

春の気配は陽射しのなかに

小さなつぼみのなかに

矢のように飛ぶ鳥のきらめきに

そっと安らいでいる

 春の気配は出かけ行く足音に

木の芽のきざしに

遠い山の麓に

旅する人を待っている

 春の気配は子どもの口笛に

水仙の香りに

鳩の胸がふくらむように

しだいにこみあげてくる


朝の風景

久しぶりに涼しい夏の朝

マラソンランナーが駆けて行く

子どもたちの黄色い帽子

川が流れ 森が茂る

いつのまにか増えた新しい家々

鳩に豆をやる老人

今日 私に何が起こるだろうか

今日 あなたに何が起こるだろうか

夏休みの思い出

友人と分担し「夏の友」をしあげ

後は遊んで過ごした

中学・高校では

期末テストの後 映画を見に行った

やがて時は流れ

父が死に 母が死んで

教員に夏休みは無くなった

 

蝉の声だけが夏を告げている

タガナの農場

タガナの農場で働くのはもういやだ

彼らは一休みすると怠け者だと言う

何か言おうとすると 思い切りドアを閉める

彼らは一週間かかる仕事を一日でしろと言う

彼らは粗悪品を高く売りつけている

おれがおれであろうとすると

彼らは石を投げつける

タガナの農場で働くのはもういやだ

昭和のアルバム-ソネット-

夏には金魚売り

田園を走る機関車

コッコと鳴く鶏舎

秋には焼き芋売り

 

夜にはかわずが鳴きしきり

稲穂がゆれる風車

止まっているアイス売りの自転車

「いつもの」「なじみの」店があり

 

人と人とのふれあいは穏やかだった

返事の手紙を待つ間

心はときめいた

 

冷戦はあった けれどテロはなかった

ロマンチックラブは アンドロメダ

星雲のかなたに消えてしまった

オルガンを弾きなさい

オルガンを弾きなさい

美しい(ひと)

肌のように白い鍵盤を

髪のように黒い鍵盤を

二度と帰らない

春の日々を

オルガンの調べに乗せて

 

オルガンを弾きなさい

美しい(ひと)

災害が来る前に

もう一度 あの人と巡り会いたかった

たった一言 伝えたい言葉があった

青葉茂れる

公用地が無くなって

青葉茂れる

火事の址に

青葉茂れる

売れ残った土地に

青葉茂れる

私が亡くなって百年後には

青葉が茂っているだろうか

春にして君と別れ

春にして君と別れ

秋にして君を想う

灯火三千字

宛先は見つからず

プリズムの光

光の当たり方で 色々に見えるらしい

「あなたって変わってるわ」

「先生は怠け者だ」

「マジメの上に○○が付くんじゃないか」

「引き出しの多い人」

「天ぷらでも食べて もう少し話したら」

「つきあいにくい奴」

どれも当たっているようで

どれも当たっていない

立派な人には 最初から成れない

いつも断崖の隣に住んでいる

マージナルマンはマージナルのままに

つつましく生きてゆくだけ

白馬岳の思い出

朝早く 宿舎を出て

足元だけを見つめて登る

草の匂い 崖の小道

昼食し 皆で歌った「主よ、みもとに近づかん」

山道で見た ニッコウキスゲ

忘れられない高嶺の花よ

アイゼンを付け 雪渓を登る

山荘の女性が教えてくれた

初夏 満天の星

夜明け前 しだいに広がってゆく虹色の山々

それは十四歳の夏の思い出

君は何を見たのか

君は何を見たのか

私は見た 親子心中の犠牲になった子どもを

君は何を見たのか

突然に裏切る小学校の友だちを

君は何を見たのか

いつのまにか消えて行った中学の同級生を

君は何を見たのか

内ゲバで血だらけになった学生を

君は何を見たのか

横行する教師の体罰を

君は何を見たのか

女たちの果てしない欲望を

君は何を見たのか

閉鎖病室から「出してくれ!」と叫ぶ精神病者を

君は何を見たのか

一日中 川の流れを見つめている憔悴した女を

君は何を見たのか

右へと変わって行く世界を

君は何を見たのか

「毒親」に侵された子どもを

君は何を見たのか

きょうだいは他人の始まりであることを

君は何を見たのか

地獄の家庭を

君は何を見たのか

世の中が金と力で動いてゆくことを

君は何を見たのか…………………

被差別部落の少女

川のほとりに美しい少女が住んでいた

そこには近寄ってはいけないと皆が言った

修学旅行の夕暮れ

脱衣場で彼女の裸の姿を見た

カーテンがすぐに閉まった

彼女の姿態が心に焼き付いた

川のほとりには 今はだれもいない

赤とんぼの唄が聞こえる

海から渚に流れついたような 朝

夢のかけらが星屑のように波間に輝いている

清掃車から赤とんぼの唄が聞こえる

寄せる年波

寄せては返す波のように

しだいに衰えてゆくことの悲しみ

車椅子 認知症の老人を見るたびに

暗澹たる思い

若者たちは美しかった

年波から得たものは角が取れ 

智恵がついたことだろうか

ベツレヘムの星

この都会では 

ひとりぼっちでクリスマスを祝う人々がどれだけいるだろうか

飢えた人々がどれだけいるだろうか

華やかなパーティに入れない人々がどれだけいるだろうか

教会では祈りがささげられ

今も昔も変わらない

ベツレヘムの星

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