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投稿者 高野弘幸
作成日 2013-04-17 (水) 07:33
ㆍ照会: 2010  
希望の子育て 第2章 つらい時

                                          第二章       

                                            つらい時            

 前の章では、21世紀と1950年代の世界がどれほど違うかを見てみました。その結果、子どもたちも含めて多くの人たちが、以前よりも高度な心理的な悩みを持つことが多いことを、多数のデータが指摘していました。「パピルス」(原注1)というボランティア団体は、若者の自殺予防をしているのですが、調査と援助グループを通して、以下のような考察をまとめました。

 

  今の英国では、15歳から24歳の若者たちの死の第二の原因は(第一の交通事故に続いて)自殺である。

  若者たちのうち、毎年おおよそ500人の男子と100人の女子が自殺している。注意すべきことは、女子たちは男子たちよりも死のうと試みることが多いが、彼女らは暴力的な方法を用いず、女子の未遂者は例えば薬物乱用などに走ることが多い。これで分かることは、女子たちは男子たちよりも生き残る可能性がはるかに高く、一方男子たちは特に首吊りや銃などの暴力的手段を用いる(原注2)

  これら自殺を試みる者の半数は、精神的な悩みがあると位置づけられていない。

 

子どもたちの自信を高める手助けをするためには、私たちはもう少し心理的な悩みに理解し、特に(よく)うつについて理解する必要があります。

心理的な悩みと抑うつ

 心の悩みは、いろいろなあり様があり、ネガティブな(訳注:否定的な)情緒の全体に及んで現われてきます。例えば、怒り、不安、恐れ、悲しみ、ストレス、欲求不満などです。私たちは、心理的な悩みを日常生活の一部で毎日体験しています。私たちが、「小さな落ち込み」に対処できないときには、とりわけそうです。しかし、心理的な悩みは潜在的に私たちにダメージを与えます。これをチェックしないままに、長期に渡って持続すると、私たちは抑うつに陥りますが、それは「ちょっとした小さな落ち込み」よりも、もっと明らかな衰弱を来たすものです。また、最後には心理的な悩みは、生理的なところに及んできます。日本の調査(原注3)によると、不相応に大きいパーセントの心臓発作が、人々が働きに出かける準備をする月曜日の朝に起こる、という報告がありますある人たちが次の週のことを考えるときストレスを経験し、これが血圧を高め、心臓発作が起こることが考えられます。

 

 おそらく最も広く知られている心理的な悩みは、うつ病でしょう。うつ病は、脳の化学的なアンバランスから来るとしばしば言われます。たしかに多くの場合、神経伝達物質―モノアミンとセロトニンと、ノルフィネフィリンの量の減少があります。しかし、うつ病を単なる化学的なアンバランスと見なすのは、病気に対する荒っぽい誤解です(原注4)。脳の中のノルフィネフィリンとセロトニンの量が少なくなるのは、ネガティブに内省するパターンの過剰(かじょう)と、楽しい活動に参加することの少なさから来ると思われます。

 

 上に書いた神経伝達物質のアンバランスに対抗するため、医師が子どもたちに抗うつ剤を処方するように依頼されることは、だんだん普通になってきました。しかし、これらの薬は強い作用を持つだけではなく、潜在的に困った部分を含んでいて、薬の依存性もありえます。薬はうつ病治療に的を絞ったものですが、覚えておかねばならないことは、薬はうつ病の原因そのものに効くのではなく、うつ病の症状に対して効くにすぎないということです。多くの薬は短期間の使用が認められていますが、「人生全体」のうつ病に見合っていません。薬は化学的なアンバランスの兆候(ちょうこう)を取り扱うことには適していますが、うつ病の原因ネガティブな内省パターンと楽しい活動への参加には、効果がありません。

 

 簡単に言うと、うつ病というのは、生活に対しても、自分自身に対しても、私たちの頭の中がネガティブな考えでいっぱいであるということです。その結果、私たちは元気のつくことを何一つする気が起こらず、子どもたちも大人と同じような傾向を示します。

 

 化学的なアンバランスに抑うつが含まれていることは明らかです。しかし神経心理学と心理学から見た原因は、もう少し複雑です。アメリカ国立精神衛生学会(原注5)は、傷つきやすさには遺伝子が重要な役割を果たしており、人生の早期における喪失が、

脳の機能を変え、抑うつ的兆候に対するもろさを増大する、という発見をしました。この本では後に、素質と養育の影響や、子どもたちの心理的な悩みへの陥りやすさについて詳しく見てゆきましょう。

 

 多くの人々は、子どもたちがストレス、不安、「うつ」に苦しむなどとは考えてもみないようです。うつ病などに無縁の人は、神経伝達物質が私たちの脳のアンバランス

を生み出し、それがどれほど人を衰弱させるか理解できません。そもそも心理的な悩みを理解しない人々は、そういう悩みに特別同情しません。こういう同情の欠如は、大部分、「それはあなたのこころの問題だ」という考えに基づいており、そう考えることによって、人々は「冷静になる」必要があるのです。心理的な悩みは、体の傷、例えば折れた脚とは目に見えて違っています。その結果、精神衛生上の問題は、いくぶん非現実的に見られるようです。頭の中がネガティブな考えでいっぱい、ということは、一見、単純に解決できそうに見えます。しかし、この力は無意識から来るもので、私たちがひとたびネガティブな考え方のパターンに陥ると、それは私たちからポジティブな気持ちをすべて吸い上げて乾燥させ、最終的には、たくさんの悲劇的なケースがあるように、大人と子どもの命まで奪ってしまうのです。

 

 自殺したいと思った子どもの分かりやすい1つの例として、グラハムの場合を挙げてみましょう。グラハムはリックがカウンセリングをしていた若者でした。グラハムの両親と兄は、グラハムが小さい時から、たえず彼を肉体的に虐待していました。カウンセリングを受けていて、グラハムは7歳のときに自殺の計画を立てたことを思い出しました。彼は鉛筆を食べ、これで毒にならないかと望んでいました。グラハムは勉強することにはすっかり落胆していたので、すぐに実行に移しましたが、彼の新式鉛筆は黒鉛でできていて、毒はありませんでした。自殺は、グラハムにとって、子ども時代から成人早期を通して、ごく自然な思考パターンになりました。逆説的な言い方ですが、30歳の初めになり、ついにネガティブ思考パターンに打ち勝つまで、自殺遂行計画を立てることが、彼にとって生きることの一部だったのです。

 

 2005年、自殺調査センター(原注6)は、故意による自己損傷行為(deliberate self-harm 略称DSH)の流行を真につきとめるため、15歳から16歳の若者6、020人を対象にして、学校に対し無記名のアンケートを実施し、基礎研究を行いました。

この統計結果によると、13,2%の事例が自己損傷行為を行っており、自己損傷行為を行う子どもたちの半数は、自傷行為を行うのが最もふつうの方法でした。男女の割合はほぼ均等でした。

 

 長年に渡って、ウエンディは、ストレス、不安、「うつ」に苦しむ多数の子どもたちとご一緒してきました。これらの子どもたちはすべて、彼らの人生において大きな問題を抱えていました。そのよい例は、ジャスティンの場合で、彼は13歳の男の子でした。両親が離婚するまでの不安定な期間、親と離れて暮している間に、彼はマリファナに依存するようになりました。彼の母親が、後に彼の義父となる男性とつきあい出したときに、彼は寝室をめちゃくちゃに壊し、自傷行為を行い、店から物を盗むようになりました。これは彼がやがて心理的なサポートを得られるようになるまで続きました。

 

 別のケースは、シャキラの場合で、彼女は14歳の女の子でした。彼女はひどくいじめられたので、学校に行くことができませんでした。シャキラは文字通り、恐れで固まっていましたから、家から一歩も出ることができませんでした。彼女は結局、抑うつと不安に関する専門家の若い女性を紹介されました。

 

 ウエンディがご一緒していたライアムは、わずか8歳のときに、母親は彼を見捨て、家を立ち去って、ライアムの弟を連れ、キプルス(訳注:トルコ南方の地中海にあるキプルス共和国)に行ってしまいました。

 

 ここに挙げたのはごく少数の例ですが、多くの子どもたちが人生の早期にいろいろなむずかしい問題に直面しています。こういう状況で体験した悩みは、多くの心理的、かつ肉体的な問題を導きます。

心理的な症状とは以下のようなものです

 

長い時間1つの仕事に集中できない/理由のない恐れ/単純な仕事なのに、ミスなしには完成できない/ちょっとした出来事にはふつりあいに強いネガティブな情緒、例えば怒りや悲しみ/死にたい気持ち/何事にも気持ちが麻痺して何も感じない

 

肉体的な症状とは以下のようなものです。

 

 不眠/食欲がない/皮膚の病気/

免疫システムが消耗し、病気にかかりやすくなる:高血圧/心臓病/ガンなどの成人病

 

 これらは、心理的な悩みが原因となって起こる病気に含まれます。

 

 ですから、ストレス、不安、「うつ」は一見複雑な問題ではないようにして現われてきますが、その効果はたいへん有害で、よく注意しておかないと、潜在的には命取りになります。この章では次に、ネガティブな内省というものが、いかに私たちの人生の発展を心理的、肉体的危機に陥らせることができるかを見てゆきましょう。

 

こころはDVDの書庫

 リックが最初に「希望の国へ」(原注7)の説明を始めたとき、人々はちょっと難しい理論だなと思いました―その本でリックは、こころはDVDがいっぱい溜まった書庫であるという例えをしましたが、この説明は、多くの大人や子どもに容易に理解されました。

 

 あなたの頭の中に、DVDがいっぱいある書庫を連想してみてください。あなたの毎日の生活は、みなこのDVD記憶に記録され、こころの書庫に溜め込まれます。多くの心理学者が、記憶は永続するという説を立てています。別のことばで言うと、私たちが経験することはすべてこころに貯蔵されています。しかし、私たちの記憶再生システムはあまりよいものではなく、私たちはえーっと、と思い出すときに懸命に努力しなければなりません。ところが、ある光景、ある音、ある匂い、ある味が、引きがねを弾くように、特別な記憶を呼びさます場合が、しばしばあります。

 

 例えば、最近リックが自分の3人の子どもを乗せて車を運転していると、ラジオから「シャイ・ガイ」という歌が流れてきました。子どもたちはすぐに、数年前ポーツマス(訳注:リックの故郷の港町)で過ごした夏休みのことを思い出しました。「シャイ・ガイ」という歌が、夏休みの記憶を呼び起こす引きがねになったのです。というのは、ポーツマスにいた週に、リックはアズワードというバンドのCDを買い、その中には「シャイ・ガイ」のヴァージョンが含まれていたからです。その夏休みの間ずっと、リックはそのアルバムを聴いていました。その結果、数年立ってもなお、「シャイ・ガイ」という歌は、子どもたちのこころの記憶を呼び起こす力を持っていたのです。

 

 ですから、私たちのこころの書庫には、ばく大なDVD記憶のカタログが溜め込まれています。単純に言うと、あるDVDはたいへんポジティブ(訳注:楽しい)な記憶となって現われてきますが、あるDVDはたいへんネガティブ(訳注:暗くてつらい)で、あるDVDは中立です。子どもたちが、自分には手におえないほど難しい問題に直面し、これに挑戦しなければならなくなったときには、彼らはネガティブ優勢なDVD記憶を再生する傾向があります。そして長い間この挑戦をし続けると、ポジティブDVD記憶を再生することができなくなると同時に、優勢なネガティブ記憶の中にもポジティブな一面があることを見出すことがとてもむずかしくなります。

 

 例えば、ティーン・エージャーは家庭の問題にぶつかると、痛々しくネガティブな記憶を打ち消すために、薬物やアルコールに走ることがあります。ウエンディはティーン・エージャーのケースをよく担当してきましたが、彼らは学校に薬物やアルコールを持ち込み、その結果、停学処分になりました。学校で小旅行の催しをするときには、職員会議が開かれ、彼らを連れていくかどうかが検討されました。職員会議は数週間に渡る場合があり、その間、その子は自分の置かれている状況について、しばしばネガティブなDVDをたくさん再生し始めます。その苦しさは学校に対する怒りに変わり、また自分自身に対する怒りに変わります。この怒りは、しばしば自分の持ち物、他の人たち、また自分自身に対する暴力となって現われます。私たちが前に見たジャスティンの場合がこのよい例です。

 

 ネガティブDVD記憶は、その子が今ちょうど体験しているこころの悩みに焦点を当てて呼び覚まされます。これらのDVD記憶は、四六時中、苦しむこころに侵入するように現われ、その子にとっては、DVD記憶が再生するのをストップするのは非常に難しいのです。こころの悩みを経験したことのない人には、このDVDプレーヤーの「停止ボタンを押す」ことがどれほど難しいか分からないでしょう。

 

 私たちが、ある引きがねとある記憶とがリンクしていることに気がつけば、思考パターンを変えることはより簡単になります。もし、ある歌が人生で悲しかったときとリンクしているなら、その歌を聴くのをやめればよいのです。ところが、多くの引きがねは、あまり明らかになっておらず、ときには、それを避けることが難しいようです。

 

 前に例にあげたシャキラの場合は、同じ学校の制服を着ている生徒を見ただけで、いじめられた痛ましい思い出がよみがえります。シャキラの場合、その引きがねで、このような非常に強い心のリアクションが起こるばかりでなく、文字どおり恐怖に凍りついてしまいます。

 

 心理的な悩みに苦しんでいる子どもたちは、潜在意識にある引きがねが、ネガティブDVDを再生することにあまり気がついていないようです。次に挙げる例は、ある種の引きがねがどれほど微妙なものかを説明しています。リックが担当していたエマという若い女性は、太っていたために、学校でひどくいじめられました。

 

 エマは後になって、あちこちの地方のお客さまを訪れるセールスの代理人になりました。新しい仕事をするようになって数ヵ月後、エマは、ある特定のお客さまを訪れる際には決まったように、いじめられたときのネガティブで痛々しいDVDが再生することに気がつきました。そのお客さまは、月2回、規則的に彼女を呼び出しました。リックはエマの心理療法をしながら、何がDVDの引きがねになるか、正確に思い出してみるように言いました。その結果、エマは、そのお客さまの工場から数マイルのところ、中央分離帯のある二車線に分かれる道路にある看板を思い出しました。その看板には「ミレット・ファーム・ストア」Millet Farm Storeと書かれています。エマは特にファーム・ストアには興味がないし、看板にもほとんど気がついていませんでした。エマは自動車を運転しながら、その周辺の視界に注意してみましたが、心理療法を受けるまでは、この看板のDVD記憶が、自分の潜在意識を呼び覚ましていることに気がつきませんでした。

 

 この看板がいじめのDVD記憶を呼び覚ましていました。というのは、いじめの主犯格の女の子の名前は、マンディMandyと言いました。マンディと看板がリンクする関係は、非常に微妙なものでした。エマはもっと若いときに、ジョイス・ランケスター・ブルスリーの小説「ミリー、モリー、マンディ」Milly, Molly, Mandayを読んでいました。ファーム・ストアの名前である「ミレット(Millet)」は、「ミリー(Milly)」によく似ていました。そして、エマの心の潜在意識にある「マンディ(Mandy)」という名前を呼び起こしました。こうして順番に、いじめられたDVDが再生される原因になったという訳です。この一連のお話から、微妙な潜在意識が引きがねになるので、私たちの心にネガティブDVDが侵入するのを防ぐのがいかにむずかしいかが分かります。

(訳注:ジョイス・ランケスター・ブリスリー:18961978は、イギリスの女流作家で、挿絵入り小説「ミリー・モリー・マンディ」シリーズを著し、82歳で亡くなった)。

 

 私たちがDVD記憶の停止ボタンを押し、イジェクト・ボタンでDVDを外に出すことができる、という考えは、心理的な悩みにさいなまれている子どもたちには、受け入れるのがむずかしいことのようです。しかし、侵入するネガティブなDVD記憶を再生し続けると、これが脳の神経伝達物質に影響し、ひとたびそうなると、「うつ」のサイクルが回り始めます。後ほど書いてゆきますが、ネガティブな「記憶」は、未来に生じてくる結果も作り出します。ですから、私とリックがこの本で「記憶」ということばを使う場合、そのことばは、過去の出来事だけでなく、未来の成果とも関係することばと思ってください。子どものこころにいったん()かれた種は、将来に恐ろしいほどひどい結果をもたらし、子どもが「自分でかなえてしまう悪い予言」を体験する可能性があります。

 

 この本のパートⅡでは、子どもたちが明るい将来を見通すことができるポジティブなDVDを作る練習のしかたについて述べます。そこでは、「自分でかなえることができるポジティブな予言」の作り方が分かるように、子どもたちを援助します。

 

自己不信感という災い

 もし子どもたちがネガティブDVD記憶を再生し続けると、それは自己不信感につながり、何かが起こったときには自分が悪いのだと信じるようになります。そして彼らは、自分は自分の置かれている状況に対処するには不適格なものだと思うようになります。その状況が、子どもたちがしたこととは縁がなく、誰か他の人がしたことから起こったことであっても、です。ウエンディが、多くの「問題」児と長年かかわってきた経験では、彼らは強い自己不信感を持っています。ハリーという6歳の子どもは、学校では自分の名前以外、何も書くことができませんでした。ハリーは、とても恐れを持っていたので、間違ったことを書くという危険を冒すよりは、何も書かない方がよいと思っていたのです。ウエンディが彼を少しずつ説きほぐした結果、ハリーは指人形にエンピツを持たせるようになりました。それから、少し言葉が書けるようになったのです。

 

 ケリーは、これと対照的に、書くことに秀でていました。しかしながら、彼女は算数が苦手なようでした。ケリーは何度も両親からお前は計算がダメだ、と言われたことを思い出しました。ここで()かれた自己不信感の種が、彼女から算数の能力に関する自信をすべて奪い去ってしまったのです。

 

 自己不信感は自信の喪失につながりますから、ストレス、不安、「うつ」に苦しむ子どもたちに、「頑張れ」というアドバイスをすることは、いちばんどうしようもなくするやり方で、最悪の場合は、彼らがすでに体験している自己不信感をあおるだけになります。

 

 自己不信感がさらに増大すると、子どもの気分はさらに落ち込みます。落ち込めば落ち込むほど、彼らはかつて楽しんだ活動をしなくなります。かつて楽しかった活動をしなくなるほど、過去の記憶にネガティブなレッテルが貼られます。そして、それがこころの書庫に溜め込まれます。このようにして悪循環が起こります。

 

網状に活動するシステム―脳のフィルター

 こころに悩みを持つ子どもは、その日のなかでポジティブで幸せな出来事を経験しても、それをこころのフィルターから閉ざしてしまいます。ですから、夜に思い出される今日一日のDVD記憶は、別に起こった憂うつなエピソードだけになってしまいます。その結果、子どもは自己価値感のレベルがさらに下がる経験をします。

 

 私たちの脳は非常に複雑な組織で出来ています。心理学者たちは、はっきり言ってそれがどう動くのかまだ分かっていないと言うでしょう。ある程度あきらかに言えることは、私たちの心には、意識のレベルと無意識のレベルがあって、その間に脳細胞のかたまりがあり、それがフィルターのように動くということ―網状に活動するシステム、RASです(訳注:RASは、網状に活動するシステム the reticular activating systemの頭文字を取った略語)。このフィルターは、無意識から意識へと、何か関係のある情報を流します。

 

 ウエンディが幼稚園の入園係をしていたときのことです。私は小さな子どもたちに、すてきなものを見せましたが、どういう情報がフィルターから除外され、どれが残されるかは、子どもによって違うということを経験しました。例えば、ウエンディは朝のうちに道化師を呼んで来たり、犬のガイドさん組織からワンちゃんを呼んできたりしました。一日の終わりに、私は子どもたちに何を覚えているか聞きました。子どもたちはしばしばその日の最後に起こったことを話しました。それが最新の記憶だからです。また、今お腹がへっている子どもは、今日のベスト1はランチだったと言いました。あるいは、一人の子どもは、小さな、しかし、その一日に重要な関係のあることに焦点を当てました。例えば、「ぼくはボールをなくしちゃったんだ」。

 

 これを説明するには、子どもたちに次の練習を与えます。学校から家に帰る道で、赤い車を何台見たかという質問をして、それをメンタル・ノートにつけてもらいます。次回には、家に帰る道で銀色の車を何台見たか質問します。たぶん彼らはぽかんとして、少し混乱し、銀色には注意しなかった、赤い色に注意せよと言ったではないか、というでしょう。しかし、しかし、彼らはたいてい銀色の車を見たと思う、だってイギリスでは銀色の車は一番ありふれた色だから、としぶしぶ認めるでしょう。銀色の車は彼らの意識から遠のいていました、というのは、フィルターは赤い色だけ通していましたから。

彼らは銀色の車を見たのです。しかし、銀色は無意識から意識へ送られませんでした。これは、私たちが心理的な悩みを経験しているときと同じです。フィルターは心理的な悩みが重要と思われるのでそれに関係したことだけ意識に上らせます。

 

 もしフィルターが子どもの生活のネガティブDVD記憶を意識に送るようにセットされると、子どもの自己不信感をつのらせることは避けられません。もしフィルターがDVDを通して過去の困難や隠れたおびえや危険な状況を示すと、自己不信感は彼らのこころにしのびより、彼らの自信を破壊します。下の図を参考にしてください。

            

 マットは13歳の男の子でした。お母さんのカレンと、お父さんのケビンは、数年前離婚しました。母カレンは、マットと、義理の娘のシャルロットを養うために素晴らしい仕事を得ました。父ケビンは定期的にマットを訪れてサポートしていましたが、残念なことに、全くあてにならない

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