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投稿者 高野弘幸
作成日 2013-04-22 (月) 07:39
ㆍ照会: 2005  
希望の子育て 第6章 プレッシャーの下で

第六章

プレッシャーの下で

 これまでこの書物では、何らかの心理的な悩みを持っている子どもたちの心の中では、どういうことが起こっているかを説明してきました。私たちは、誤った思考と、ネガティブな内省を作り出すネガティブDVD記憶がこころのフィルターを占めている場合とがリンクしていることを見てきました。これがその後で自己不信感や、自信の喪失や、低い自己評価や、自分でかなえてしまうネガティブな予言を招くのです。この章では、私たちの心がなぜこのような働きをするか、また特に、私たちが非常に外傷的な経験をした場合に、心を守るために、短期間の間にどういうことが起こるかを見てゆきます。

 

心の免疫システム

 子どもの心はたいへん複雑でパワフルな装備を持っています。子どもたちが情緒的な困難に出会うたびに、心は自動的にこの困難をやり過ごすようにしようとします。生化学的な免疫システムと同じように、心は私たちを情緒的な困難から救おうとします。しかしながら、心の免疫システムは長期的な解決よりも、短期間の防衛をするように働くようです。私たちが情緒的な困難に出会ったとき、私たちの意識は、情緒的に恐ろしい状況を機敏に見通します。それは過去のネガティブDVD記憶の識別能力によって起こるもので、潜在意識からフィルターを通して送られてくるものです。

 

 リックがカウンセリングをしていたジャッキーという若い女性の場合は、長期的な解決ではなく、短期的な防衛のよい例です。ジャッキーがティーンエイジャーだったとき、彼女の両親は泥酔し、ときには激しい喧嘩をしました。しばしばこの喧嘩は殴り合いの結果になり、時にはジャッキーはその板挟みになりました。ジャッキーは学校から家へ帰る途中、今夜は何が起こるだろうかと何度も思いながら歩いたことを思い出しました。家にたどりついたとき、両親の間にどんな雰囲気があり、両親がお酒を飲んでいるかどうか、どんな風に両親が話しているかが分かるようなサインを捜していました。彼女は暴力的な言い争いが起こりそうなきっかけを見抜くことが上手になり、しばしば喧嘩が暴力的にエスカレートする前に家を出ることができるようになりました。ジャッキーにとって不運なことに、彼女の両親の危険信号を、意識的に察知する能力が効果的に作用するようにフィルターがセットされたために、これがジャッキーの一般的な思考パターンになってしまったことでした。

 

 ジャッキーは過敏なおびえを持つようになり、一般的な人生の場面にも危険なことをネガティブに想定し始めるようになってしまいました。この誤った考えのために、彼女は人生をすべてネガティブに予想しました―彼女のフィルターは、人生の早期からネガティブなことをとらえるようにセットされていたのです。この思考パターンは、彼女が家から出て、暴力的な喧嘩をする両親の潜在的な危機に気が付く必要がなくなってからも、長い間続いていました。この免疫システムは、短期間には有効であっても、長期間には有効でなかったのです。

 

 潜在意識の他の側面は、子どもたちがトラウマ的な人生の出来事に直面した場合に、子どもたちを情緒的困難から救うために現れてきます。ときには、非常に痛ましい出来事を取り扱う唯一の方法は、それがなかったかのようにすることです。信じられないような痛ましいことが私たちの身の上に起こったとき、私たちの心の機構は、それに対処するために全く違った方法を使います。免疫システムは、そのDVD記憶が非常な痛みをもたらすと察知すると、心のDVD書庫から離れたところにそれを置きます。事実上、それは心の記憶から隔離されます。「希望の国へ」で、リックはこれを例えて、DVDを箱に入れて、それが開かないように、重い蓋を置いておくようなものだと言っています。

 

蓋を置いておくということ

 ティーナには4人の男兄弟と、2人の姉妹がいました。8歳になったとき、6歳年上の兄弟から性的虐待を受けました。この虐待はティーナが14歳になって、この兄が家を出ていくまで続きました。ティーナは自分に何が起こっていたかが恥ずかしかったので、これを誰にも言いませんでした。

 

 20歳前になって、彼女はやがて結婚することになる一人の男性と関係を持ちました。けれど性的虐待のことは、決して夫に言いませんでした。結婚してしばらくして、ティーナは夫に飲酒癖のあることが分かりました。彼女が妊娠していたとき、夫はティーナの身体に虐待を加えました。2年間の結婚生活の後、ティーナは夫と離婚することにしました。彼女の20代の前半、ティーナは他のどんな男性とも関係を持たないことに決めました。彼女は性的虐待のことを秘密にし、先の夫の身体的虐待に耐えていたことも秘密にしていました。

 

 何が自分に起こったかを誰にも話さないようにすると同時に、自分自身にさえ、そういうことが起こったことを認めないことにしました。彼女はそれらの特別に痛ましい虐待のDVD記憶を箱に入れ、彼女の心のDVD書庫の高い棚の上に載せておきました。彼女は箱の蓋が開かないようにその上に重石を載せておきました。このDVDは隔離され、ティーナはこの信じがたいほどの力を持つネガティブな記憶が、彼女の心の他の部分を「汚染」しないようにしました。

 

  ティーナはこのDVD記憶を見ないことにし、彼女はこれがなかったことにしました。この方法は、ある地点まで有効でした。その後15年の間、彼女は虐待のことを決して話さず、それが起こったことも認めませんでした。その時、彼はマイクに出会いました。ティーナは他の男性と関係を持つことを意図しませんでした。彼女と娘とは一緒に幸福に暮らしていました。しかし、マイクと交際を持つ機会がやってきたとき、ティーナは彼に深い情愛を持っている自分に気がつきました。関係が親密になるほど、あのDVD記憶が箱から出てきそうになるのです。いったんDVD記憶が箱から出てしまうと、それが心の中で再生しないようにするのは困難でした。驚くにはあたらないことですが、彼女がDVDを再生すればするほど、それは彼女の心を「汚染」し、短期間のうちに、彼女は不安と悩みと抑うつに襲われるのでした。

 

 ティーナはまもなく、専門家のサポートを受けながら、このDVD向き合わねばならないことに気づき、ついにこのおぞましい記憶を克服することができました。彼女はもはやDVDを箱に入れて重石を載せておく必要がなくなりました。彼女はこのDVDをたやすく書庫から取り出して、他の所へ出ていかないようにしました。また彼女は、もしこのDVDがうっかりと引き出されてしまっても、もはやストレス、不安、「うつ」の兆候になるほどの力を持っていないことが分かりました。

 

以前に申し上げたように、DVD記憶を箱に入れ、重石を載せて隔離する方法は、ティーナにとって、ある地点まで有効でした。しかしながら、それは彼女にとって、負担のかかることでした。何年もの間、彼女は男性との間で意味のある交際を避けていました。ある種の関係を持つことが、箱の中のものを引き出して、痛ましいDVD記憶が再生されることを恐れてきました。人生の中のこの領域において、多くのポジティブな情緒を満たすはずの潜在的な関係を、彼女は知らず知らずのうちに成長させずに生きてきたのでした。

 

 箱の蓋を閉めておくのはたいへんな仕事です。箱の上に重石を置いて、箱が開かないようにするのには、多くの努力を必要とします。この努力は、もし蓋が開けば被害者の心の中を汚染するネガティブDVDの箱が心の書庫にあるという事実に基づいています。その人の潜在意識は、箱の中に隔離された人生のネガティブな側面に正確に気が付いています。同様に、心のフィルターは箱を開けてしまう危険のある引き金を常に探しています。ティーナの場合は、これが自己の成長を妨害するものとなっていました。ティーナは、男性に対して、慎重に、あまり魅力のないように自分を作り、潜在的な関係を持つ機会を無慈悲に破棄していました。ただ、マイクが「彼女のレーダーにこっそりと」入ってきたとき、彼女は自分の問題に立ち向かわねばならないことを知ったのでした。

 

箱の蓋を開けること

 慎重に、少しずつ、箱の蓋を開けるときのみ、私たちはトラウマとなった人生の出来事に向かい始めることができます。これを行う助けとなるのは、理想的な条件とよいカウンセラーです。サポート的な親しい友人や、親族や、先生でも、さばいたりとがめたりせず、よい意味のあることを言ってくれたり、不適切と思える助言をしない人ならば、少しずつ箱の蓋を開ける助けになります。免疫システムにたとえて言えば、箱の蓋をそっと開けることは、心に抗体を入れて少しずつ免疫をつけることに似ています。

 

 以前に記したように、私たちは子どもたちがよりよくトラウマを取り扱えるように援助することができます。多くの物事が、子どもたちにはトラウマのようになります。第二章で書いたシャキラは学校でたいへんいじめられました。暴力を伴ういじめは彼女に文字通り恐怖にこわばる経験を残しました。シャキラはウエンディに自分の体験を話すことができたので、自分に何が起こったかという地点からスタートすることができました。シャキラがDVDを箱に入れたまま、それに直面することができなかったのですが、数年たってそれが浮上してきたのでした。

 

 第二章ではまた、グラハムの事例を挙げました。彼は常に全家族の誰かから殴られていました。グラハムはDVDを箱に入れてつねにそれをやり過ごし、箱の上に重石を載せて安全にしておきました。グラハムはDVDを見ないように保つ技術に特にたけていました。彼は、もっともっと幸福な家庭を想像の中で思い描き、夢見ていました。しかしながら、彼は幸運なシャキラのように早いうちに援助者を見つけることができなかったので、グラハムはティーンエイジャーの時期と早期成人期にしばしば自傷行為に走りました。

 

 心がどのように働くかを知っておけば、子どもたちを痛ましい、不幸なDVDを箱におしやらないように、先立ってサポートシステム作っておくことができ、それが後には強い防衛や自信や自己価値観を生みだします。しかしながら、多くの子どもたちに、自分の体験をあからさまに話してもらうことは容易ではありません。多くの子どもたちは、痛ましい体験をブロックしておくことが、当面のところ効果的な心の痛みを避ける方法であることを直感的に知っています。しかし、彼らに対して私たちが心のドアを開けておくならば、彼らがもはや箱の蓋をしめておくことができなくなったときに、それを潜り抜けるように援助することができます。

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